私の暮らす世界には、ポケモンたちも生きている。
不思議な視線に気づいたら、エスパーたちがそこにいる。
寝て起きて、食べては飲んで、出会って別れて、空をながめて、
記憶のなかのその日々に、エスパーたちも息づいている。
〈第四夜 アサナン〉
ブレイン&パワーズって男の人たちがやるものじゃないの。
喉まで出かかったツッコミは、眼前にいるバトルガールのオリハの、あまりにもまっすぐな眼差しに封じ込められた。
サイキッカーとして、小さいころから周囲には馴染めなかった。かといって同じサイキッカーがたくさんいるヒャッコクジムで修業をしていても、特別居心地の良さを感じていたわけではないし、自分の将来やりたいことも見えていなかった。
急に声をかけてきたオリハも、そのパートナーのアサナンも、今まで出会ってきた者たちとは決定的に何かが違っていた。
アサナンはエスパーポケモンらしく念力を使うことができるのだが、最大の特徴は独自の呼吸法で自身のパワーを高めていること。人間でいうヨガに近いことから、ヨガパワーという特性として知られている。
テレパシーを通じて伝わってくることだが、アサナンは、修行やバトルのときにはとにかく無心。雑念を排し、集中力を極限まで高めることで信じられないほどのパワーを発揮する。
余計なことを考えないまっすぐさは、トレーナーのオリハにも通じる部分がある。興味を持ったことはすぐに行動に移す。かといって目移りしやすいわけではなく、「最強のブレイン&パワーズになりたい」という目標はずっと持ち続けている。
私はブレイン&パワーズのブレイン担当ということにはなるが、くよくよと考えこむばかりで、面白いことを思いつくのはいつもオリハのほうだ。
アサナンというポケモンのストイックさには敬服する。1日に数個の木の実だけを口にして、空腹で自分を追い込むのだそうだ。そんなアサナンにカロリーの高いものをふるまうわけにもいかないので、最近はシンボラーと集めたハーブでハーブティーをふるまっている。
やりたいことが見えず、星の導きを探していた自分に、壁を砕くパワーで道を切り開くことを教えてくれたオリハとアサナンには尊敬の念を抱いている。私もシンボラーと共に精進しようと改めて誓った。
〈次回 バネブー〉