ガラナガーデン

ポケモンの思い出を中心に

エスパー千夜一夜【チャーレム】

私の暮らす世界には、ポケモンたちも生きている。

不思議な視線に気づいたら、エスパーたちがそこにいる。

寝て起きて、食べては飲んで、出会って別れて、空をながめて、

記憶のなかのその日々に、エスパーたちも息づいている。

 

〈第九十四夜 チャーレム

 

「今月の『月刊サイキッカー』、チャーレム特集だったけど、読む?」

「えっ!いいタイミングだね!ありがとう!しばらく借りるね!」

私たちはブレイン&パワーズサイキッカーの私……カテリと、バトルガールのオリハは、二人で日々修行をしている。

私が定期購読している雑誌に、チャーレムの特集があった。私の相方、バトルガールのオリハがちょうどアサナンチャーレムに進化させたばかりだったので、彼女にも読んでもらうことにした。

 

「『月刊サイキッカー』、カテリが読んでるのは知ってたけど、私は初めて読むかも」

エスパーポケモンについての色んな情報が載ってるから、今はサイキッカーじゃない読者の人もたくさんいるらしいんだ」

『月刊サイキッカー』が創刊した経緯は、その名の通り、全国のサイキッカーの交流や情報交換のためだった。私が定期購読しているのもサイキッカーである父の影響なのだが、初めて父の購読していたものを読んだときには未だサイキッカー専門誌の色が強かったように記憶している。

 

サイキッカーでない人が、エスパーポケモンについて知るために雑誌を買うことが増えたこと。読者アンケートで浮き彫りになったその事実が、雑誌の方針を大きく変えた。その流れに前後して、サイキッカーではない人物……シンオウ地方の四天王・ゴヨウの連載が開始したのは象徴的だった。

エスパーポケモンと共に生きる、すべての人のための情報誌」……雑誌名が変わらなかったことで、その変化はあまり界隈の外には伝わりきっていない。しかし、私は今の『月刊サイキッカー』が好きだ。エスパーポケモンと共に生きるためには、サイキッカーの素養があればいいものではない。エスパーポケモンを知ろうとする姿勢こそが、エスパーポケモンとともに生きる資格なのだ。そう思った。

 

「喜怒驚楽エクササイズのDVDだって!あとで一緒にやってみようよ!」

「リップさんのプロデュースした体操みたいなやつだよね。私も運動不足を解消していかないとなあ」

「インストラクター役の人、キハダ先生だよね!パルデアの学校でバトル学の先生をしてる人なんだけど、かくとう使いの実力者として有名なんだよ!」

「そ、そうだったのか……」

 

チャーレムは空腹に耐えることで強い精神力を養い、高いパワーを発揮するポケモンだ!でも人間にとっては、過度な食事制限は逆効果だぞ!しっかりバランスのよい食事をして、健康な体でいることもトレーナーの努めだ!……かくいう私も、食事のバランスを養護教諭の友人にきつく注意されたばかりだ!

そんな文章を真剣に読むオリハを、彼女の相棒であるチャーレムがじっと見守っていた。

チャーレムは私にテレパシーで語りかけた。運動をするらしいが、大丈夫か?ケガをするなよ。

……どうやら私のことを、よく理解しているらしい。

 

〈次回 ドーミラー

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